◆科学コミュニケーション◆

「科学コミュニケーション」という言葉を知ったのは、2009年くらいでした。当時の行政刷新会議(いわゆる事業仕分け)でのスパーコンピュータ「京」に関する一連の騒動をキッカケに、社会の中での科学の在り方について強く興味を持つようになりました。

現在は、科学コミュニケーションという理念の理解を深めると共に、自らもサイエンスカフェなどの活動を通して、社会における科学の在り方について思いを巡らせています。

最近は、科学コミュニケーターが持つべき能力の明確化、科学コミュニケーション活動におけるアクティブラーニング手法の活用、水俣病問題などに関心があります。

[最近の研究成果]

小林良彦・中世古貴彦

「科学技術コミュニケーターに求められる職務及び職能に関する試行調査:JREC-IN Portalに掲載された求人情報を用いた分析」

科学技術コミュニケーション Vol.25 p3-p16 (2019)

小林良彦・川村桃子・栗林なな子・椎谷郁花・玉木駿佑・眞鍋達郎・宮田恵理・村田菜摘・阿部ふく子・中野享香

「大学院生による分野横断型イベント『学び合いカフェ』の実践:新潟大学における科学技術コミュニケーション活動の報告」

科学技術コミュニケーション Vol.22 p17-p32 (2017)

【科学コミュニケーションとは何だろうか?】

科学コミュニケーションについてはさまざまな説明がされています。もちろん、おおまかには同じことを言っているのですが、これぞ!という明確な定義はありません。それは、個々人の立場や経験が異なることや、それぞれが目指す“科学コミュニケーション”が多様であることの現れです。このような背景を鑑みると、自分としての“科学コミュニケーション”を持つことが大切になります。僕にとっての科学コミュニケーションは「科学に関する話題について、双方向的かつ対等なコミュニケーションを行おうとする理念」です。

ここで留意して頂きたいことがあります。それは、科学コミュニケーションの推進は一方向的な講義や講演会の否定ではない、ということです。科学コミュニケーションは、従来の一方向的な科学啓蒙へのアンチテーゼのような役回りもありますが、それはあくまで一側面です。“双方的かつ対等なコミュニケーション”ではなく、(分かり易い)講義で科学を知りたいという方もたくさんいるでしょう。

【サイエンスカフェ】

サイエンスカフェは科学コミュニケーション活動の典型例です。その起源は、1990年代にヨーロッパで広まった「哲学カフェ」であるといわれています(※)

そもそも科学コミュニケーションが日本で注目され始めたのは、2003年ごろです。科学技術政策側からの指摘を契機に科学コミュニケーションという言葉や理念が日本でも広がり始めました[1]。それを受けて、『平成16年度版 科学技術白書』では、社会と科学者の「双方向的なコミュニケーション」の重要性が説かれました。とりわけ、白書内のコラムで紹介されたサイエンスカフェのインパクトは大きいものでした[2]。それ以降の隆盛は、科学技術振興機構(JST)が提供しているウェブサイト Science Portal内のイベント情報からも垣間見ることができます。

サイエンスカフェはその名の通り、カフェや喫茶店、もしくは図書館などで開催されることが多いです。その理由は、科学の専門家でない人たちが参加しやすい場所であることと、話題提供者である専門家が極力権威的にならない場所であることが挙げられます。運営は大学や科学館がしていたり、個人や有志で行っているものもあります。これらの要素を持つサイエンスカフェは、大学や研究機関の“見える化”の担い手にもなっています。

『平成16年度版 科学技術白書』でも紹介されたヨーロッパを中心に広がったCafe ScientifiqueではPower Pointによるプレゼンテーションが非推奨だそうです。科学者が自分の言葉のみで話すことにより、参加者に対等な立場であることを感じてもらうためです[3]。日本のサイエンスカフェでも例えば、東京で行われているウィークエンド・カフェ・デ・サイエンス(WE Cafe)でも、できるかぎりPower Pointプレゼンテーションを行わない方針で開催されています。